世界的講演会を毎年主催しているTEDのカンファレンスにおいて、Uberの創設者トラビス・カラニック氏とAirbnb創設者ジョー・ゲビア氏が登壇し、スピーチを行いました。
両氏のスピーチは2016年2月から公開され、すでにそれぞれ125万、90万の視聴回数を超えています。
本記事では、新たなビジネスモデルとして世界に知れ渡る「シェアリングエコノミー」の先駆者ともいえる2人の創設当時の想いや、苦労、発展のための工夫などを取り上げていきます。
目次
・ Uberトラビス・カラニック氏が語る、人が運転する交通手段の未来
- 時間、土地、空間の不自由を取り払いたい
- “同じボタンを押して、同じ目的地に、同じタイミングで”行きたいひとを繋ぐ
・ Airbnbジョー・ゲビア氏が語る、シェアリングエコノミーのための信頼構築
- ビジネスチャンスは意外なところから 大型イベント参加者への貸し出し部屋
- 「知らない人は危ない」? 信頼を築く、Airbnbの作戦
- シェアリングエコノミーは、人間的なつながり Airbnbの思い描く世界
・ まとめ
Uberトラビス・カラニック氏が語る、人が運転する交通手段の未来
1. 時間、土地、空間の不自由を取り払いたい
トラビス氏はアメリカの車事情に対し、とある問題点を挙げました。それは車を所有しても、96%の時間は稼働させていないという点です。また、そのような生活の大半使われていないものに、私たちは身の回りの空間のうち、最大3割も取られている点も指摘しています。
こうした使われている時間の短さと、収容スペースの大きさの問題は、多くの都市の公共交通機関にも共通する問題として、同氏は受け止めています。Uberは、こうした問題意識から生まれたのでした。
2. “同じボタンを押して、同じ目的地に、同じタイミングで”行きたいひとを繋ぐ
トラビス氏は2010年にUberのサービスをスタートさせました。そのときは、ボタン1つで車が呼べてしまうというシンプルな利便性を売りにしていました。
しかし利用者の増加に伴い、ボタン1つで車を呼びたい人が多くいるだけでなく、呼でいるその場、その時間から同じ目的地に向かっている人たちも多くいることも発見しました。
そこで同氏は、同じ目的地へライドシェアできると、1人あたりの運賃を最大半額に減らせるのではないか、それだけでなく、渋滞に苦しむ地域から走行車の数を減らせるのではないかと考えました。そして、ライドシェアサービスUberPOOLが開発されました。
同氏の思惑は見事に現実のものとなりました。15年6月、ロサンゼルスにおいて同サービスを毎週使ってライドシェアをする利用者は増え、スピーチがあった当時でその数10万人にものぼりました。
また、車の走行距離を1,270万キロ分減らし、大気中の二酸化炭素を1,400トン削減することもできました。これらの功績は8ヶ月という短い期間で行われていました。
Airbnbジョー・ゲビア氏が語る、シェアリングエコノミーのための信頼構築
1. ビジネスチャンスは意外なところから 大型イベント参加者への貸し出し部屋
Airbnbのルーツは、ゲビア氏の貧しい生活体験から来ています。
当時仕事もお金もなかったゲビア氏は、「街のホテルは大型イベント時に、どこもいっぱいだ」と耳にしました。そこで、ルームメイトのブライアン氏に「家をデザイナーズホテルとして提供しよう」と提案をしました。
それから2人は簡単なウェブサイトを作り、宿泊サービスをスタートさせました。
サービス内容はWi-Fiや朝食などはあるものの、寝床は木の床に置いた安物のエアーベッドという極めて質素なものでしたが、訪れたゲストたちは彼らのサービスに大満足でした。
これをきっかけに、同氏はメンバー集めを開始。以前のルームメートのネイサン・ブレチャージク氏を共同創業者として迎え、ビジネスとして本格始動したのです。
2. 「知らない人は危ない」? 信頼を築く、Airbnbの作戦
Airbnbをスタートさせるため資金集めをするゲビア氏でしたが、快く投資してくれる投資家には当時恵まれませんでした。
「赤の他人の自宅に泊まらせるなんて、なんと恐ろしいことだ」と、常識外れのサービスとして敬遠されていたのです。
そこで、同氏はゲストの信頼性を高めるため、ゲストの情報開示を思いつきました。ゲストのプロフィール公開ページを作り、ホストがそのゲストに対して安心、信頼性をもてるようにしました。
加えて、ゲストに対するレビュー機能も備えました。宿泊を受け入れたホストが、滞在中の様子からどんなゲストだったか評価し、それを他のホストにも見ることができるようになっています。宿泊中に態度が悪いゲストは、受け入れてくれるホストが減っていき、Airbnbのサービスを享受できなくなってしまう仕組みができています。
3. シェアリングエコノミーは、人間的なつながり Airbnbの思い描く世界
シェアリングエコノミーにおける取引物は、家であったり車であったりしますが、借りるのは「モノ」ではなく、「その人の一部」であるべきとゲビア氏は考えます。つまり、シェアリングエコノミーは人間的なつながりのある商行為だと、同氏は主張しているのです。
プライバシーや個人の自由が尊重が優先され、孤立や分離を感じる設計になりがちな現代社会の家が問題視される一方、「共有すること」を基に造られた家なら、それぞれコミュニティや人としてのつながりが持てるだろうと同氏は語ります。
実際、韓国のソウルでは、既に居住スペースの「共有」が始まっており、子供が家を巣立って部屋が空いている家庭に、部屋を探している学生をマッチングしたりしています。また、そうしたシェアリングエコノミーのスタートアップを支援するインキュベーターも整っています。
まとめ
トラビス氏もゲビア氏も「人と人とのつながり」がキーワードとなるビジネスを構築してきました。
Uberにおいては、ドライバーとライダー、あるいはライドシェアをするライダー同士を結びつけています。Airbnbではホストとゲストという存在から成り立っています。
Uberは現在、440以上の都市で普及しており普及率No1は中国ですが、現在ベトナムがその勢いを増しているとのことです。車社会ともいえる東南アジアにおいて、Uberをサイドビジネスとして利用する人が増えているのでしょう。
一方、Airbnbでは191ヶ国、34,000以上の都市で登録されており、受け入れたゲストの総数は6千万人にものぼるとのことです。今年の4月に民泊に関する規制緩和が施行されました。また、Airbnb調べによる2016年訪れるべき都市ランキングの1位がなんと大阪となりました。今後、日本においてもAirbnbのビックウェーブが訪れることでしょう。