近年シェアリングエコノミー大国として、世界に存在感を示している中国。人口の面で超大国であるだけでなく経済発展も目覚ましいことから、中国のシェアリングエコノミー市場規模は桁外れの大きさです。
今回はその中国シェアリングエコノミーのメジャーなジャンルから、民泊、家事代行、自転車シェア、カーシェアの4つの事例を取り上げて、中国のシェアリングエコノミーの市場規模や、日本との違いなどに注目してみていきましょう。
目次
- 中国におけるシェア経済の市場規模とは
- 日本と中国のシェア経済における違いについて
- 中国の代表的なシェアリングサービス4選
・家事代行サービス「阿姨来了」
・民泊「途家」
・自転車シェアサービス「ofo」
・タクシーサービス「DiDi」 - まとめ
1.中国におけるシェア経済の市場規模とは
新たな経済市場として世界中で注目を集まるシェアリングエコノミーですが、中国でのシェアリングエコノミーの発展は確実なものとなっています。
中国の国民情報センターが発表した「中国シェアリングエコノミー発展報告(2018)」では、中国シェアリングエコノミー市場の取引額について4兆9,205億元(約83兆6,485億円)に及ぶ模様です。前年比も47.2%増で、目覚ましい勢いで市場は拡大していることがわかります。
同調査によると利用者数の増加も顕著で、7億人もの人がシェアリングエコノミーを利用しています。これは前年比では1億人の増加にあたる数値です。
経済産業省が発表した通商白書2018概要では、医療、住宅・宿泊、知識・技能、交通、生産能力、生活サービス、金融にわけて市場規模の内訳を解説しています。
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2018/pdf/2018_gaiyou.pdf
取引額では個人間の貸し借りも含んだネット金融などの金融系が2兆8,000億元と半数以上を占めています。また金融に次ぐ4分の1を占め、伸び率も80%以上と好調な家事代行などが含まれる生活サービス系、取引額は少ないものの伸び率120%超えのスキルシェアに代表される知識・技能系などがあります。
2.日本と中国のシェア経済における違いについて
日本では元々企業が提供するサービスの質が高く、企業側がその品質を担保しているので安心してさまざまなサービスを利用できます。しかし中国は国全体で見ると、高品質なサービスを利用できる環境がそれほど整っていませんでした。多くの国民は、タクシーや銀行など流通するサービスに不満を抱えていたのです。
そんな中で、中国政府がシェアリングエコノミーを積極的に支援する政策を打ち出したこと、スマートフォンが一気に普及したこと、アリババやテンセント、百度らIT企業が個人認証機能や決済機能、個人データの管理・利用を行える環境を整備していたことが重なり、シェアリングエコノミーは爆発的に普及しました。
加えてこれら中国IT企業がシェアリングエコノミーのユニコーン企業に対して、買収や出資を積極的に行っていることなどにより、創業してまもない企業でも資本を十分に確保できるため、シェアリングエコノミー市場での新サービスの誕生につながっています。
また日本では偽札の流通はあまり取り上げられることのない問題ですが、中国でははるかに身近な問題でもありました。そのような社会情勢でスマートフォンが普及し、さらに政府の後押しもあったため、電子マネーでの支払いが一気に浸透し、人々がお金の持ち方を変えました。このこともまたオンラインで支払いまで完結することがほとんどであるシェアリングエコノミーの拡大に大きな影響を与えたと言えます。
一方で日本は既存のサービスが成熟しており、シェアリングエコノミーで提供されるサービスをだれが担保するのかなど不安感や、人と共有することに対する抵抗感がある人が多いという傾向があるようです
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3.中国の代表的なシェアリングサービス4選
家事代行サービス「阿姨来了」
阿姨来了(Ayilaile)は中国語でおばさんがやってくるという意味で、家政婦さんのマッチングから支払いまでを行うプラット―フォームです。社員数400人、ホスト14万人、利用者20万人を抱えています。同社では阿姨大学という大学を開校して、家政婦教育を行い高品質なサービスの提供を目指しています。
日本の質の高い家事代行のマッチングサービスと言えば、Bearsがあります。従業員数は385名、登録スタッフ数は5,200名。Bearsでも独自プログラムの研修を受けて合格しないと就業できないシステムになっているようです。
両者は単なるプラットフォームの運用だけではなく、家事代行スタッフの教育に力を入れている点で共通性があります。
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民泊「途家」
全世界で110万軒、中国だけでも80万軒の登録があるという民泊の「途家」。グループには4000人の社員がおり、9000万ユーザー、アプリは1.8億ダウンロードされていると報じられています。
また同社は2017年に楽天LIFULL STAYと民泊事業での提携を明らかにしています。これにより途家は2025年までに日本国内の登録物件数20万件を目標としており、訪日中国人顧客を獲得するために力合わせています。
日本の民泊のプラットフォームとしてはSTAY JAPANやTateru bnbがあります。これらの事業者は2017年時点で1,000件あまりと少ないですが、住宅宿泊事業法(民泊新法)、特区民泊、旅館業法に登録された合法民泊のみを取り扱っているので、安心して利用できるのがメリットと言えるでしょう。
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自転車シェアサービス「ofo」
2014年創業の中国発の自転車シェアofoは、世界21ヶ国・250都市、1,000万台の自転車を所有しています。ofoによるとこれまで2億人を超えるユーザーが1日3,200万回ほど利用していると言います。その反面フォーブスの報じるところによるとofoは資金面で手放しに健全であるとは言えない状況なのだそう。
そんな状況下で、2018年3月にアリババから8億6,600万ドルを調達したと言われています。しかしながら2018年上期の営業利益は減少しているため、筆頭株主の滴滴出行やアリババで今後話し合いがもたれるのではという見方もあるようです。
そのほか近くofoでは、出資元をアリババグループ傘下のアントフィナンシャルと中国ライドシェア最大手のDiDiとして、数億ドルの資金調達が行われると報じられています。
一方日本の自転車シェアの先駆けと言えば、ドコモ・バイクシェア。会員数は31万人、2017年の利用回数は350万回で、前年比で1.5倍もの成長を遂げています。
ofoやMobikeといった中国2強の事業者の資金面に注目が集まりがちですが、自転車シェア自体はまだまだニーズの拡大が期待されるシェアリングエコノミーの一つです。
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タクシーサービス「DiDi」
https://www.didiglobal.com/travel-service/taxi
DiDiこと滴滴出行は約5億5000万人のユーザー数、 2,100万人を超えるドライバーと車両オーナーがプラットフォームを利用しています。2017年はDiDiを通じて11億件の配車が行われています。
2018年2月にはDiDiとソフトバンクの協業が発表されました。両社は日本のタクシー事業者向けにDiDiの卓越したAI(人工知能)技術を活用して、タクシー配車プラットフォームの構築し、ドライバーの稼働率向上と利用者の利便性向上を目指します。日本では白タク問題など中国とは異なる環境を抱えているので、タクシー事業者や関係省庁、その他ステークホルダーと積極的に連携し、日本の全タクシー事業者が導入可能なオープンで中立的なプラットフォームの構築を目指すとしています。
日本では自家用車でタクシー業務を行うと、白タクと言われる非合法な行為になります。そのためDiDiと同様のサービスは実質ありません。ヒッチハイクのような中距離ライドシェアのnottecoや、CtoCカーシェアのAnycaなどがあります。
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4.まとめ
次々と新しいサービスが生まれては統合されたり、廃業したりを繰り返し、強いサービスが生き残っていく中国シェアリングエコノミー市場。中国国内だけでなく、海外展開も積極的なことから、日本への進出も少なくありません。中国からの訪日観光客を商機として、日本進出する企業もあります。
中国シェアリングエコノミー事業者は今後進出先でどんな展開を見せるのか、中国国内の問題をどう解決していくのかは引き続き注目していく必要があります。