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インターネットの発展などにより、個人が家事や雑事を依頼し、企業がライティングや画像制作などをアウトソーシングできるようになりました。仕事を依頼する側は別の作業に集中でき、仕事を請け負う側は空いた時間を有効活用できるため、リソースのシェアリングは人々の生活を大きく変えようとしています。

本記事ではそもそも「リソース」とは何があるのか、どういった仕事を頼めるのかまとめてみました。

※編集部注:

2018年11月21日に加筆修正しました。

目次

  1. リソースのシェアとは何か?
  2. リソースのシェアのサービス事例
    ・家事代行サービス
    ・スキルシェア
    ・労働力のシェア
  3. 海外のトラブル事例
  4. まとめ

1. リソースのシェアとは何か?

リソースのシェアとは、多くの場合、インターネットを介して“人材”や“労働力”を共有することを指します。具体的には、主婦や学生など、比較的時間に余裕がある一方で専門的な知識やスキルを持たない非専門家の方や、弁護士や税理士など、資格保有が前提となる専門職の方、クリエイターやデザイナーといった特殊技能を必要とする専門家の方がいます。

リソースのシェアリングエコノミーが「業務内容の外部委託」という文脈で語られる場合は、“クラウドソーシング”とほぼ同義と考えられるでしょう。

 

2. リソースのシェアのサービス事例

家事代行サービス

少子高齢化と働き方改革が叫ばれる今日ですが、長時間労働や低い有休消化率に代表されるように、働き手の労働環境はなかなか変わりにくいのが現実。数少ない休みは家事に追われずゆっくりしたいと、文字通り他人が家事を代わりに片付けてくれる「家事代行サービス」が活況しています。株式会社矢野経済研究所によると、特に共働き夫婦や単身者の利用が増加傾向にある注目のシェアビジネスです。具体的なサービスを紹介します。

https://www.taskrabbit.com/

「Taskrabbit」は、2011年にアメリカでスタート。買い物代行、引っ越し手伝い、部屋の掃除、子どもの送り迎え等、日々の雑務を代行してくれる人を見つけるサービスです。(引用元: おつかいはTaskRabbitにお願いしよう
依頼者は、サイトに仕事を掲載。掲載費用は無料で、誰でも仕事を依頼することができます。仕事の内容や条件、希望する時間帯などを見て、その仕事をやりたいTaskRabbit(登録者をこう呼ぶ)が、いくらで仕事をしたいかオファーします。依頼者は、オファーのうち、自分の条件に合った人を選ぶことができます。

支払いは、あらかじめ登録したクレジットカードで決済されます。TaskRabbitが約15%のサービス料を差し引き、残りが仕事を請け負った人に支払われる仕組みです。

仕事を請け負う人は事前に登録申請書を提出し、ビデオによる面接と身元調査を受け、オンラインでのトレーニングを受けます。こうして顧客の安全を守ると共に、信用を維持しています。仕事の完了後、依頼主は仕事を請け負ったTaskRabbitを評価することができ、その評価はサイトで公開されます。さらに依頼主はその評価やプロフィールを見て、特定のTaskRabbitに直接仕事をオファーすることも可能です。

日本でも、似たサービス事例にクラウド家事代行「CaSy」(カジー)があります。

https://casy.co.jp/

徐々にサービスエリアを拡大し、ベッドタウンと言われる子育て世帯に人気の横浜市・さいたま市・流山市、名古屋、京都、宮城でも、掃除や料理の代行を依頼できます。仕事を依頼したい人は会員登録後、PCやスマホから、最短で希望日時の3時間前まで予約することが可能です。他の顧客からの評価や自己紹介、本人写真などのスタッフ情報も公開されており、ユーザーも依頼しやすくなっています。

異業種との業務提携による栄養を補えるお料理代行サービスや、法人向け新サービス「オフィス清掃×総務業務サポート」と、単なる家事代行にとどまらず派生した新たなシェアエコサービスを展開しています。

さらに「タスカジ」は、利用者と“タスカジさん”と呼ばれるハウスキーパーのマッチングを行うシェアリングエコノミーサービスです。キーパーとして外国人を豊富に採用しているのが特徴的です。異文化交流や子どもの英才教育を目的に、あえて外国人のキーパーを指名する利用者もいるようです。
株式会社DMM.comが提供している「DMM Okan(おかん)」は、担当者を選ぶ必要はなく独自システムで最適な担当者をマッチングしてくれます。また、交通費別途という事業者が多い中、同社では交通費を含んだ料金体系ということで、シンプルで分かりやすい点も人気となっています。
市場の成長に伴い、今後はさらなるサービスの充実や多様化が進むことが期待されます。

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スキルシェア

得意なことや、空いた時間などをシェアして、個人のスキルを必要とする人と必要とされる人のマッチングを行うスキルシェア。個人間のみならず、個人と企業をつなぐシェアエコサービスも登場しています。柔軟な働き方を実現しうる1つの方法として、働き方改革の観点からも注目を集めています。具体的なサービスを紹介します。

https://www.timeticket.jp/

2014年7月1日から始まったTimeTicketは時間のシェアリングサービスとして有名。プログラミングや写真の撮影方法、筋トレの仕方など、さまざまな趣味・特技を持った人が時間を販売しています。

サービスの特徴は、各人が 自分の時間を30分単位でチケットとして売買しているところ。

他人に時間を提供できるユーザーが、ホストとして自分のチケットを登録し、30分から5時間まで、自ら設定した対価で空き時間を販売することができます。チケットの中身は雑事から仕事の相談まで、幅広いです。

安全な取引も配慮されています。運営側が全ての取引を仲介・監視するため、ホストとゲストが直接チケット代金のやり取りを行うことはありません。ホストは仮支払を行ったゲストだけに会うシステムです。また、時間提供後にはホスト・ゲスト間で互いにレビューを登録できます。

イオングループの結婚相手紹介サービス株式会社ツヴァイと協業し、2018年8月からタイムチケットの人気ホストが婚活に役立つ講座の提供を開始しました。企業とタッグを組んだ少子化対策にもなり得る新たな挑戦は見ものです。

TimeTicketでの合計寄付金額が100万円を突破しました!

TimeTicket

チケットの売上の一部はホストが選んだ寄付先に送る仕組みになっており、その割合も10~100%までホストが決定します。2015年3月末で寄付総額が100万円を突破。その後も、寄付金額を伸ばしています。

TimeTicketは時間という単位で取引されていましたが、経験や知識、スキルを売買するサービスもあります。

https://coconala.com/

ココナラは、仕事やプライベートのノウハウ、技術をネット上で売買できる、モノを売らないフリーマーケットです。オンラインでも可能な依頼内容が原則で、誰でも1回500円(税別)から出品・購入することができます。ココナラ広報担当によると、登録ユーザーは現在70万人、出店されたスキルの数は17万件と、2年前と比べるといずれも3.5倍も増加。累積の成約件数は150万件を達成し、わずか2年で4.5倍もの規模に成長しています。

2018年8月には、オーダーメイド旅行会社「ウェブトラベル」と業務提携を行いました。ココナラで旅行プランの相談を行うのみならず、チケット手配も可能になり、ますます利便性が高まっています。

https://www.bengo4.com/

2015年、テクノロジーやメディア、テレコミュニケーション分野の企業が対象となる「売上高成長率ランキング上位50社」において、「弁護士ドットコム」は15位にランクイン。
更に2018年、弁護士ドットコムがアジア太平洋地域 急成長企業ランキング「FT 1000: High-Growth Companies Asia-Pacific」では95位にランクイン。

法律・税務相談などの専門領域のポータルサイトの雄として、確固たる地位を築きつつあります。2015年6月末時点で有料サービス会員数は前年比5割増の5万2000人強、2018年6月には14万人を突破。業績の伸びも著しく、2016年3月期は売上高が前期比57%増、経常利益は81%増と、今後の成長にも期待できます。(引用元:https://zuuonline.com/archives/87037/2

法規に則りながらも、法務手続きの簡素化を実現した日本初のWeb完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」は2015年10月のサービス提供以来、右肩上がりに導入企業が増加しています。法律をキーワードに、新サービスや他業種との連携も続々登場し目が離せません。

このようにリソースをシェアするビジネスは市場のニーズに応えるため、幅広く展開されており、今後のさらなる多角化や統合の動きにも注目です。

さらに、新たな形でスキルのマッチングが行えるプラットフォームも続々と登場しています。

福利厚生業務の運営代行サービスを行う株式会社ベネフィット・ワンは、「Worker’s Market」をリリースしました。福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」を利用する企業や団体会員428万人が対象となり、会員間でサービス料・手数料無料にてモノやスキルのシェアを行うことができます。

活況するシェアリングエコノミー市場ですが、プラットフォーム開発が高いハードルとなり、新規事業者が参入しにくい状況でした。そこで登場したのは「いきなりシェアリングエコノミー」。独自の開発プログラムにより、すぐに事業を始められるパッケージを提供しています。

他業界よりシェアリングビジネスへ参入する企業も続々と増えています。2018年6月、IT大手の株式会社サイバーエージェントは、同社が運営するAmebaにスキルシェアリングサービス「REQU(リキュー)」をリリース。芸能人や有名人などがスキルを販売し、2019年度中に1万人のセラー獲得を目指しています。
各社が新サービスを提供する反面、多様なサービスが乱立している状況で利用者にとっては情報の取捨選択に戸惑うこともしばしば。国内外の主要なスキルシェアサービスをまとめたカオスマップも作成され、遊休資産を有効活用できるよう理解と促進が進むことを願っています。

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労働力のシェア

働き方にも新しい流れが加わり、もっと多様に働ける未来を創造するクラウドソーシングに注目が集まっています。満員電車や重なる休日による混雑、土地価格の高騰、保育園や学童の待機児童問題など、都市への人口集中がもたらす影響は少なくありません。発達したIT環境を生かして都市型ビジネスモデルの弊害を解消し、地域活性化の起爆剤となり得る労働力のシェアに注目が集まっています。

従来の働き方を覆すクラウドソーシング。これはインターネットを介して他者に仕事を依頼できるサービスです。プラットフォームとして有名なのは、「ランサーズ」と「クラウドワークス」です。企業に出勤することなく、仕事の受発注が可能となります。

労働力のシェアは地方での働き方も変えます。人口減少や空洞化により空き家や休眠中の別荘が増加し、空き家の有効利用による地方創生が求められる昨今。こういった空き家を民泊に活用できれば、宿泊施設の少ない小さな町や地方にも観光客が足を運ぶきっかけとなります。観光客の増加により周辺産業が活性化し、宿泊施設のメンテナンスといった新たな雇用も生まれます。また観光客向けのカーシェアやライドシェアなどのシェアリングエコノミーが広く普及するきっかけにもなるでしょう。地方創生・雇用の創出の鍵を握っている可能性は大いにあります。

どこに住んでいても多様な働き方を実現できる可能性を秘める一方、労働組合や雇用の保障、社会保険、福利厚生がないことが問題視され始めています。また、クラウドソーシングのみで生活できる方はまだ少数派で、副業としての位置づけがまだ強い傾向にあります。
働き方改革の起爆剤として国が主体となり、シェアリングエコノミー労働者のセーフティーネットや地位確立のため、法整備や世間の認知を進めることが急務です。

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3. 海外のトラブル事例

頼んでいない赤の他人に、家事された? サービス提供者は、プラットフォーム運営会社の“従業員”なのかどうか

Homejoy

2015年7月、アメリカの家事代行サービスHomejoyがサービスを終了しました。その原因の一つとして考えられているのが、ユーザーと現場のホームクリーナー間の訴訟トラブルです。良質なサービスを求めるユーザーは、Homejoyから斡旋された人が正式な“従業員”や“請負業者”とはいえないと感じたのです。

これは他のシェアリング関連プラットフォームでも問題になっています。アメリカのライドシェアサービス大手Uberも同様の訴訟を抱えており、今後、サービス提供者とユーザー間でよりWin-Winな関係を作っていける仕組みづくりが急がれます。

このようなトラブルを未然に防ぐため、本人認証の重要性が叫ばれています。契約前に信頼できる人か否かを判断する手段として本人確認を行い、トラブルへの対処や犯罪を未然に防ぐ一助となります。また、増加の一途を辿る新規参入企業にとっても、オペレーションやコンプライアンスがしっかりとしていることは必須事項といえます。安心してサービスの利用ができるよう、今後本人認証は必要不可欠なものになりそうです。

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4. まとめ

リソース分野におけるシェアリングエコノミーは便利さと安さ、ユニークなアイデアによって、ユーザーから人気が集まっています。単なるブームに終わらず、今後もこれらのサービスが成長を続けるためには、ユーザーと事業者の関係性を良好に保てる仕組みづくりや、法整備に対する柔軟な対応力が鍵となります。

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