メルカリが三菱総合研究所とシェアリングエコノミーに関する共同研究を実施したと発表しました。フリマアプリで洋服や化粧品を購入するユーザーにWebアンケートを行い、購入前後の行動心理や購買内容の変化について調査・分析を行いました。その結果、モノのシェアリングを行う消費者には従来とは異なる新たな消費者行動がみられることが判明しました。三菱総合研究所はこの新しい消費モデルを「SAUSE(ソース)」と定義し、今後シェアリングが拡大するにつれ社会・経済全体に大きな変化をもたらすのではと考えています。この共同研究の結果から見えてきた新たな消費モデルと、今後のメルカリの展望についてご紹介します。
目次
- メルカリ、三菱総合研究所の共同研究について
・調査概要と結果
・売却を見越した新品購入 - シェアリング普及後の消費者モデル「SAUCE」について
- 最近のメルカリの動向と展望
- まとめ
1.メルカリ、三菱総合研究所の共同研究について
調査概要と結果
アンケートはフリマアプリで洋服や化粧品を購入した経験のある20代以上のユーザー(利用頻度は3か月に1回以上、化粧品については女性のみ)を対象に実施されました。
その結果、フリマアプリを日常的に利用する消費者は、モノへの価値観が「所有」から「一時利用」に変わることで従来と異なる消費行動をとることが判明しました。
約半数以上の利用者が、新品を購入する時から将来の売却を意識して商品を選択すると回答。また、同時に売却金額も意識することで新品を購入する機会が増加、あるいはより高価格帯の商品を購入する傾向が見受けられました。
従来、シェアリングエコノミーの拡大で新品購入が減少し、消費を押し下げるとの懸念が指摘されていましたが、洋服や化粧品においては必ずしもそうではなく、売却を意識することで新品購入へのハードルが下がっているともいえます。
主幹調査員の三菱総合研究所・宮川貴光研究員は、「今回の調査結果で、シェアリングはむしろ消費の拡大につながるような行動心理も一部では生じていることがわかりました」とコメントしています。
売却を見越した新品購入
アンケートでは、新品を購入する際に将来売却することを意識するかという問いに、洋服は65%、化粧品は50%が意識すると回答。購入頻度は、洋服は36%が変わったと回答し、うち19%は購入頻度が増加、17%は減少したと回答。特に洋服ではフリマアプリの利用が節約以外の目的で利用されていることがわかります。
https://about.mercari.com/press/news/article/20190226_mercari_mri_research/
また購入頻度が増加した理由では、「フリマアプリでの売れ行きが良いから」「フリマアプリで小遣い稼ぎができるようになったから」という回答が上位を占め、将来売却できることで新品購入が後押しされるのではと考えられます。購入の価格帯については、52%が購入する洋服の価格帯が変わったと回答、うち18%は高価格帯にシフト、15%は低価格帯にシフトしたと回答。特にシェアリングサービスを日常的に利用すると想定される20代、30代では、洋服で45%、化粧品で36%が高価格帯にシフトしたと回答しています。従来の節約や小遣い稼ぎを目的とした利用だけでなく、売却して得られる金額を新品の購入予算に加えることで、従来よりも高価格帯の商品を購入する傾向も見受けられます。
https://about.mercari.com/press/news/article/20190226_mercari_mri_research/
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2.シェアリング普及後の消費者モデル「SAUCE」について
今回の調査で、シェアリング利用者の行動や心理には従来の消費者モデルとは異なる特徴がみられたことから、三菱総合研究所は新たな消費モデルを「Search・Action・Use・Share・Evaluation」(検索・行動・一時利用・再販売・評価)の頭文字をとり「SAUSE(ソース)」と定義しています。
https://about.mercari.com/press/news/article/20190226_mercari_mri_research/
これまでの消費活動と違う、その特徴は下記の3点です。
1.Searchから始まる消費行動
スマートフォンの普及で意思決定までのプロセス(認知・興味・関心)がひとまとめに。リアルタイムで情報収集(検索)へ至る行動に変化。
2.モノの「所有」から「一時利用」へのシフト
商品は一時利用するものという心理が働くことで、消費においてもその心理に影響された行動を取るようになる。
3.モノの貸与・売却後に決まる商品評価
商品が手元から離れた時点で「利用対価(購入価格から売却価格を差し引いた実質の支払金額)」という観点でモノの評価を行うようになる。
シェアリングエコノミーに対する消費者の意識は、日本では認知度は高くなりつつありますが、実際に利用した経験のある人は欧米に比べるとまだ少ないと言えます。
今後ますます普及していくにつれ、このような新たな消費行動が社会全体に広がっていくことが考えられます。
3.最近のメルカリの動向と展望
メルカリは2018年6月19日に東証マザーズ市場に上場し、フリマアプリの累計ダウンロード数はすでに1億ダウンロードを超えています。
メルカリが2019年1月19日に発表した2018年の利用動向によると、にメルカリで売却経験のある約250万人の平均月間売上額は17,348円で、これはおよそ一世帯あたりの水道・光熱費に相当するものです。また、年代・世代ごとでは60代以上男性の売上額が31,960円と最も高く、次いで60歳以上の女性が29,788円で、20代、30代だけではなく幅広い世代にシェアリング利用が拡大していることがわかりました。
金融関連の新会社メルペイにも注目が集まっています。アプリでの売上金をコンビニやレストラン等の加盟店で利用できるサービスで、すでに2019年2月13日にはスマホ決済サービスがスタートしています。
将来は決済サービスにとどまらず新たなサービスを展開していく予定です。すでに福岡で展開しているシェアサイクル(貸自転車サービス)メルチャリとの連携も見込まれています。
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4.まとめ
今やフリマアプリによる周辺サービスへの経済効果は年間最大752億円にのぼると言われ、物流、クリーニングやリペア(洋服のお直し)の需要を後押ししています。またメルカリの別の調査では、フリマアプリの利用者の42%が「修理が必要だがまだ使えるモノを修理して(フリマアプリに)出品してみたい」という意向を持っていることがわかりました。
今後は企業側も、シェアサービスを通じて商品が消費者の目に触れることを前提として、消費者に価値を提供できるようブランド戦略を見直していく必要があります。