遊休資産を活用するシェアリングエコノミーと呼ばれる経済活動が拡大しています。内閣府の試算結果によると、2013年には黎明期と呼ばれたシェア経済の市場規模は2016年時点で5,250億円。法整備を含めた信頼性の確保や利便性の向上により、近年急速に成長しており、今後も拡大の一途をたどると予想されています。
本記事ではシェアリングエコノミー利用の傾向を世代別に捉えると共に、利用経験上位のサービスやその他のシェアエコの利用について紹介します。
現在の経済活動の仕組み自体が変わっていく可能性があるとも言われるシェアリングエコノミー。その魅力と利用の理由について、調査結果を分析しながら今後の展望を考察します。
目次
- 近年のシェア経済の市場規模とは
- 世代別のシェアリングエコノミー利用の傾向
・利用経験上位のオークションサービスとフリマサービス
・その他のシェアリングエコノミーサービスの利用について - ミレニアル世代とシェアリングエコノミー
・ミレニアル世代とは
・利用意向と実際の利用について
・シェアリングエコノミーの魅力と利用の理由 - まとめ
1.近年のシェア経済の市場規模とは
総務省の発表によると、シェアリングエコノミーの世界における市場規模は2013年には150億ドルだったものが、2025年には3,350億ドルまで拡大すると予想されています。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242110.html
矢野経済研究所が実施した調査では、日本国内においても同様に2015年の398億円から2021年には1,071億円まで市場が拡大するとの予測。わずか6年で約2.7倍とまさに破竹の勢いと言えるのではないでしょうか。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/n2500000.pdf(P76)
中小企業庁のシェアリングエコノミーの認知度調査によると、約70%が「活用している」と「知っているが活用していない」と答え、世間では了知されていることがうかがえます。しかしながら、年代別での認知度を比較すると「知らない」と回答した60歳以上の割合は約40%と比較的高い数字です。若い世代ほど、新たな概念への関心が高く、キャッチアップが早い傾向にあると言えます。空間のシェアサービスである民泊の法規制に代表されるように、法律によって課題を解消する動きもあります。平成30年度版情報通信白書での利用時に重視する点にかかる調査結果では、利用者側・提供側ともにトラブル発生時の保証が大切と回答。また、相手との連絡手段が確保されている事や、プロフィールが確認できることなど、一時的な貸し借りとは言え、双方の顔が見え安心して利用できるシステムを構築していくことが課題となるでしょう。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h30_03_houkoku.pdf(P69)
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2.世代別のシェアリングエコノミー利用の傾向
利用経験上位のオークションサービスとフリマサービス
MMD研究所が行ったシェアリングエコノミーサービスに関する調査では、「オークションサービス」の利用経験が32.9%と最も多く、次いで「フリマサービス」が20.9%でした。
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1727.html
3位以下と比べると大差のある2つのモノのシェアエコサービスですが、世代別の特徴も顕著です。オークションサービスは30~40代の利用が多い一方、フリマサービスは10~20代の割合が高いです。
オークションでは、出品したものに対して複数の購入希望者が競って購買の意思を示し、購入価格を決定します。出品者が納得のいかない金額の場合は取引自体がキャンセルとなるなど、仕組みの煩雑さがデメリットに挙げられます。
フリマサービスでは、金額の決まった商品に対して購買の意思を示せば、すぐに購入することができます。他の購入希望者との駆け引きは必要ないことが、若い世代の支持を受けているひとつの理由と推察します。
また、フリマアプリの開発により、簡単に手元のスマートフォンから商品の検索や購入、出品者とのやり取りがワンストップで行える手軽さも大きな後押しになっています。
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1727.html
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その他のシェアリングエコノミーサービスの利用について
3位のカーシェアは、自動車メーカーも参画し急成長しているサービスです。15分から500円以下で借りることができる安価な料金設定や、簡素化された手続きにより利用者数は年々増えています。維持費がかからないことから経費節約になるなどして、個人のみならず法人需要が多いことも特徴です。サービスの多様化や他業界からの参画が期待され、今後も拡大していく領域と推測されます。
個人や企業が資金を調達するひとつの方法として、注目を集めるクラウドファンディングが4位となっています。人脈の有無にかかわらず、事業や商品のアイディアなどを広く世間に知らしめて賛同者から協力を得るこの手法は、日本でも増えてきています。
5位に食い込んだのは知識・スキル・経験・売買サービスです。埋もれた個人のスキルや経験を生かして、インターネット上で出来る小さなビジネスを支援するサービスが広がっています。企業が働き方改革の一環として利用する事例もあります。
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3.ミレニアル世代とシェアリングエコノミー
ミレニアル世代とは
ピュー・リサーチ・センターによると、ミレニアル世代とは1981~1996年に生まれた人を指すと定義されています。日本では一般的に18~25歳の高校生から新社会人の年代に対して使われることが多いです。アメリカではこのミレニアル世代が経済活動に大きな影響を与えるとして、同世代をターゲットにした営業戦略が練られることもしばしば。親の世代とは異なる特徴があることから、シェアリングエコノミーとの相性は抜群と言われます。
利用意向と実際の利用について
ジャパンネット銀行が同世代に対して行った、3分野に対するシェアエコサービスの利用意向調査によると、いずれも60%以上が利用したいと回答。高い興味があることがうかがえます。他方、彼らの親世代への調査では、利用に抵抗があると否定的な回答が実に8割と意識の違いは明らかです。
https://www.japannetbank.co.jp/company/news2018/180215.html
利用してみたいサービスの中で半数を超えているのは、居住施設、ファッション、車や自転車と生活に身近なものが挙げられています。続いて、宿泊先やレジャー用品など一時的な非日常の場面でも利用の意向があります。
他方、実際に利用したシェアサービスは、以下の通り低い割合となっています。関心を利用につなげるきっかけがあれば、シェア経済をけん引する世代になり得ると考えられます。
【場所】 6%
【モノ】 3%
【交通手段】 7%
シェアリングエコノミーの魅力と利用の理由
ミレニアル世代ではシェアエコが経済的で合理的と考える割合が7割を超えます。これには、お金を使うときは合理性を重視する、モノよりも体験や人とのつながりを大事にしたいといった消費に対する価値観が影響しています。買って自分のものにするのではなく利用時にあればよい合理性を考えると、シェアサービスと親和性が高いことが分かります。
少子高齢化に伴い人口の減少が予測される中、今後ミレニアル世代が働き盛りとなり消費行動の中心的存在となります。したがって、企業としても同世代のニーズをつかむために思考錯誤する日々です。
例えば、航空会社のANAは、「TABICA」との提携を発表しました。ANAでは航空券と宿泊を手配し、旅先で体験できる暮らしの機会を提供するのが「TABICA」です。ユーザー数は1万人を超え、市場規模は600億円との予想もあります。
また、同社は世界最大の民泊サイト「Airbnb」とも提携し、暮らすような旅を提案しています。旅に体験をプラスすることがミレニアル世代へのひとつの訴求点となっています。
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4,まとめ
わずか数年で何倍もの市場規模に急成長したシェアリングエコノミー市場。今後はさらなる拡大が見込まれています。これは所有から体験へと考えがシフトした世代の消費者意識の変化が影響しています。興味はあるものの一歩踏み出せない利用者も多い中で、今後企業がどれほどニーズをとらえたサービスを打ち出していくか目が離せません。異業界からの参入や新サービスの開発も加わり、ますますの盛り上がりが期待されます。