先日、内閣府は「シェアリング・エコノミー等新分野の経済活動の計測に関する調査研究」を発表し、シェアリングエコノミーに関する市場規模の調査結果を初めて発表しました。それによると、日本のシェアビジネスの市場規模は4,700億〜5,250億円であり、GDPに占める割合はまだまだ少ない状況です。しかし、今後発展する経済活動の分野として注目度は高く、2020年にはシェアリングエコノミーの経済活動をGDPに算入するという報道もあります。今回はシェアビジネスを「スペース」「移動」「モノ」「スキル、時間」「カネ」の5つに分類し、それぞれの動向を把握しながら今後の動向を考察していきます。
目次
- 内閣府が発表 2016年におけるシェアエコ
・市場規模や経済効果
・直近の動きについて - 代表する5つのシェアビジネス
・スペース
・移動
・モノ
・スキル、時間
・カネ
- まとめ
1.内閣府が発表 2016年におけるシェアエコ
市場規模や経済効果
先日、内閣府は「シェアリング・エコノミー等新分野の経済活動の計測に関する調査研究」を発表しました。政府がシェアリングエコノミーに関する市場規模の調査結果を発表したのは初めてです。この市場が急速に発展したことにより、政府はGDP統計の作成にあたって実態を的確に把握する必要があると考え、この調査研究を発表しました。
2016年のシェアリングエコノミーにおける経済活動をベースにしたこの研究によると、シェアリングエコノミー全体の市場規模は4700億〜5250億円。これを民泊などの「スペース」、フリマアプリなどの「モノ」、家事代行などの「スキル・時間」、小口のクラウドファウンディングなどの「カネ」の4つの分野に分けた規模も算出しています。「スペース」の市場規模は1400億〜1800億円、「モノ」は3000億円、「スキル・時間」と「カネ」はそれぞれ市場規模が150億〜200億円と試算されました(カテゴリの中にはライドシェアなどの「移動」もありますが、市場規模がまだ小規模であり、また白タク規制があるため調査対象から除外しています)。
http://www.esri.go.jp/jp/prj/hou/hou078/hou78.pdf
さらに、このうちSNA(国民経済計算。一国の経済状況について、フロー・ストック面から体系的に記録したもの)に捕捉されている生産額が最大で1200億円、捕捉できていない生産額は最大1350億円規模、中古品売買のように生産の概念に入らないものが最大2750億円強あります。しかし、今後捕捉できていない部分をSNAに含むようになったとしても、およそ5000兆円規模の日本のGDPに占める割合は約0.02%であり、シェアリングエコノミーは現在GDPに大きく貢献しているといえる規模ではありません。とはいえ、政府は2020年度からGDPにシェアリングエコノミーを算入することを検討しているという報道もあり、行く末は注目に値します。
直近の動きについて
そもそも、日本のシェアリングエコノミーは民泊やライドシェアが発端となって数年前から注目されてきました。今ではサービスの種類も増え、スタートアップ企業が参入し、競争が厳しくなって市場規模はますます拡大していくだろう、と専門家は見ています。
さらに今後は、市場規模もさることながら、どんな技術を活用してシェアビジネスを展開していくかということも大きなポイントです。最近では、既存のインターネット上でのマッチングだけではなく、モバイルやGPS、SNS、IoT、そしてAIといった先進技術が活用したサービスも出現しています。こうした技術によって新たに出現したシェアリングサービスでは、個人が大企業と取引をして大きな売上を手にすることも可能になり、成長市場の起爆剤となることが期待できます。そして現在はCtoC(個人対個人の取引)が活発な日本のシェアリングエコノミーの状況ですが、最終的にBtoC(企業対個人の取引)やBtoB(企業体企業の取引)でもシェアビジネスが活用されるなど、今以上にシェアビジネスが私たちの生活やビジネスに深く関わるようになるのではないでしょうか。
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2.代表する5つのシェアビジネス
スペース
スペースのシェアビジネスは、現在最も知名度の高い民泊以外にも、会議室やスタジオなどをシェアしたり、店舗の空きスペースに旅行者の荷物を置いたりといったビジネスがさかんです。民泊ビジネスといえば、かつてはAirbnbなどの海外のサービスが主流でしたが、近年は日本でもベンチャー企業から大企業まで様々な企業が参画するようになり、ますます盛り上がりを見せています。
場所のシェアをするサービスの中では、スペースマーケットのサービスが注目されています。さまざまな種類のスペースを取り扱っており、また利用形態も時間貸しや民泊までさまざまな希望を叶えられることから人気のサービスとなりました。
この分野の最大のニュースは、2018年には民泊新法が施行されたことです。今後は法律を遵守しながらどのようにサービスを充実させていくかがポイントとなるでしょう。
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移動
移動のシェアビジネスといえば、個人の自動車や自転車を複数人でシェアするカーシェアやサイクルシェア、また車の乗り合いサービスのライドシェアがあります。
サイクルシェアは大都市圏や観光地を中心に普及し、観光客や地元住民の交通手段として普及することが期待され、各地で実証実験が行われたり本格的な導入が行われたりといったニュースが話題になっています。
ライドシェアは、日本では法規制に阻まれているため2018年現在実現には至っていません。しかし、訪日外国人の増加や東京五輪の開催を控え、特に大都市圏における深刻なタクシー不足が懸念されています。そのため、政府は規制緩和や新法の施行などの手段でライドシェアを実現させる可能性があり、今後の動向が注目されます。
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モノ
モノのシェアビジネスといえば、フリマアプリのメルカリが国内ダウンロード数7,100万件(2018年3月31日時点)を突破し、一大有名サービスとなりました。また、minneやCreemaなどのハンドメイド作品を売買するアプリに自分の作品を出品し、それを売ることによって生計を立てている人が現れるなど、モノのシェアビジネスはシェアリングエコノミーのなかでもすっかり身近なものとなりました。
この分野のシェアビジネスにはこれら以外にも、多くの印刷工場と提携することによりチラシやポスターを安く早く印刷するサービスなどがあります。生活に密着しているサービスが多く利用者も多いので、今後の成長が注目されます。
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スキル、時間
スキルや時間のシェアビジネスは、家事や日常の困りごと、人を雇うほどではないけれど誰かにやってほしい仕事とそれを行う人とをインターネットを介してマッチングし、アウトソーシングするサービスです。また、これまでに紹介したシェアビジネスを個人が行うことによって生まれる雇用も含まれます。
例えば、空き家を貸して報酬を得たり、ライドシェアが実現した場合、空いた時間にドライバーとして働いて報酬を得たりといったケースも該当します。個人が1日のうちの数時間の時間を提供するという気軽さ、また場所を選ばずにサービスを提供できることから、フリーランスやリモートワークなどの新たな働き方の推進、また地方創生を活性化できるのではないかと大きな注目を集めています。
シェアビジネスを働き方改革のソリューションとして利用することは、今後ますます増えていくことが予想されます。
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カネ
シェアビジネスは金融の分野にもさらなる普及が見込まれています。中でも、インターネットを介してお金を貸したい人と借りたい人をマッチングする「ソーシャルレンディング」が事業規模を拡大しつつあります。
その一つであるSBIソーシャルレンディングは2011年からサービスを開始していますが、2017年頃から飛躍的に融資残高が増加し、2018年4月に200億円を突破した注目のサービスです。
また、クラウドファンディングもソーシャルレンディングといえます。そのうちの一つCAMPFIREでは、自分の実行したいプロジェクトを提示すると、それに賛同する人が金銭を支援してくれるサービスが提供されています。お笑い芸人の西野亮廣さんが絵本の原画展を開催する資金を募る際に利用し、知名度を上げています。
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3.まとめ
シェアリングエコノミーは日々刻々と成長を続けており、もはや政府も無視できる規模ではなくなっています。しかし、ライドシェアのように、法規制によってサービスの拡充ができないシェアビジネスが存在することも確かです。政府には、規制緩和や新法の制定といった場面でシェアビジネスを支援し、既存のビジネスとの調整を図りながらより一層シェアビジネスを推進していくことが求められます。